皮膚上に耐水性被膜(フィルム)を形成する外用製剤の研究開発
外用製剤
- 成形剤(パップ剤・プラスター剤等)
- 半固形剤(軟膏剤・クリーム剤等)
- 液剤(ローション剤等)
従来の外用製剤の欠点パップ剤
- 粘着力が弱くテープ等で補助が必要
- 貼付時の衣服付着と貼付の困難性
- 有効成分の低い利用率と高い廃棄率
- 剥離後の不燃性医療廃棄物としての環境負荷
従来の外用製剤の欠点プラスター剤
- 粘着力が強く、剥離時の痛みと皮膚損傷
- 衣服の付着性による貼付の困難性
- 皮膚のカブレ・発赤の発症
- 剥離後の医療用廃棄物としての環境負荷
従来の外用製剤の欠点軟膏・クリーム剤
- 塗布膏体で衣服汚染
- 投与量の減少と頻回塗布の必要性
- 汗や水で取れ易く、正確な投与の困難性
- 効果の持続性が難しい(頻回投与の必要性)
研究課題
- 塗布後約30秒以内に皮膚上に角質層に近い厚さの被膜を形成
- 形成被膜は耐水性(汗や水で除去されない)
- 形成被膜は透明性を有する
- 形成被膜は皮膚に近い接触感覚を有する
- 形成被膜は半密封
- 形成被膜の患部の皮膜保護と有効成分の徐放性
- 使用後の廃棄物が少なく、環境負荷が低減
解決方法
合成高分子(ニトロセルロース)・天然高分子(ロジン・セラック)と有機溶剤の組み合わせ処方に油性保湿剤添加による操作(添加順・添加量・混合時間と温度等)の種々の処方検討を実施。
成果技術
- 第一世代フィルムスキン製剤(ニトロセルロース系)
- 第二世代フィルムスキン製剤(ロジン系)
- 第三世代フィルムスキン製剤(セラック系)
- 第四世代フィルムスキン製剤(上記3種組み合わせ)
皮膚に塗布後、30秒以内で透明で約30μmの耐水性被膜を形成する。
研究成果
紙に塗布後に形成された人工角質層の断面部(×1000)
応用可能
- 1)医薬品
-
- ①確実な治療と第三者への感染予防の可能な水虫治療薬
- ②緊急時の止血包帯(治療+保護)
- ③機能性消炎鎮痛 外用剤(持続的効果+医療廃棄物無し)
- 2)介護用品
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- ①褥瘡予防と処置+感染症予防
- ②老化皮膚の保護(皮膚裂傷の予防)
- 3)医薬部外品
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- ①手保護剤(治癒促進+皮膚感作防止:アレルギー予防)
- ②忌避剤(蚊・マダニ等害虫の持続的防除)
- ③制汗剤(持続的多汗症治療・防臭)
- 4)化粧品
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- ①日焼け防止剤(制汗と耐水性による持続的効果)
- ②化粧崩れしない基礎化粧品(制汗効果)
- ③シミ・皺の補修と化粧(被膜補正)
- 5)スポーツ用品
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- ①足裏保護剤(マラソン・ジョギング等の足裏の皮膚剥離防止)
- ②手保護剤(ゴルフ・テニス等の手の平の保護・滑り止め)
地域産業への貢献
手袋と本製剤とのコラボレーションで、手袋機能の強化と機能性ブランドとしての世界への展開
- より温かい手袋
- 滑り止め手袋(制汗)
- 肉刺(まめ)予防の手袋
- 清潔な手袋(制汗による匂い防止)
- 半指カット手袋の指保護
(2)具体的販売実績
- ①医薬部外品
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- 害虫忌避剤(蚊させない2種):約10万個
- 防臭剤(デオドラント2種):約8万個
- ②化粧品
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- 手荒れ防止剤3種(保湿剤):約1万5千個
- 手足(腫)保護剤2種:約2万個
(3)許可の必要性
- 化粧品・医薬部外品は申請後に各製品ごとに許可取得済
- 現在、医薬部外品3種類は令和2年2月中に申請予定
- 医薬部外品・化粧品の製造許可(製造委託先・・・)
- 製造委託先企業の収得
- 上記企業との秘密保持契約締結済
- 将来、香川県での化粧品、医薬部外品製造許可申請予定
(4)定量的な数値の比較例
(4)定量的な数値の比較例
(5)JICAでの利用実績
- 派遣先
- マラウイ共和国(アフリカ南東部)
- 派遣期間
- 2017年11月11日より10日間
ボランティア視察団4名に害虫忌避剤「蚊刺せない」を渡航期間中使用し、従来刺されていたボランティアも全員が全く蚊に刺されなかったと帰国後の報告と感想を受ける。
社会的課題への対応
- 医療廃棄物を無くすことによって環境負荷を低減し、二酸化炭素の発生を低減する。外用製剤(パップ剤・プラスター剤)の使用後の医療用廃棄物の環境負荷が高いが、フィルムスキン製剤は使用後の廃棄物が出ない為に、環境負荷を軽減し、焼却(燃焼)による二酸化炭素を削減できる。
- 少子高齢化に伴う介護者不足による介護の手間を省く。寝たきり高齢者が多くなり、褥瘡(床ずれ)に罹患する患者が多い現状にある。フィルムスキン製剤は褥瘡を予防し、且つ褥瘡患者のケアを容易にする機能を有し、介護者の手間を省き、効率的な介護の一助となる可能性が高い。
- 簡便で効果的な害虫忌避剤による感染症の予防。害虫忌避剤にフィルムスキン技術を応用すれば、瞬時に体表面に耐水性・耐汗性被膜を形成し、確実で持続的な忌避効果によって、東南アジアを中心に流行している感染症(マラリア・デング熱等)の予防効果が期待できる。
- 難病対策(手掌多汗症)従来の治療法(イオンフォレーシス・ボトックス注射・交感神経ブロック等)に比較して、患者に負担をかけない簡便な治療方法の提案。現在、医薬部外品として申請準備中。
研究領域
日本健康科学研究センターでは、多汗症(局所多汗症)でお悩みの方のために、フィルムスキン®︎技術を応用した制汗剤の開発をしております。
多汗症とは
多汗症(たかんしょう)とは、体温の調節に必要な通常の範囲を超えて、発汗が異常に増加することを指す症状です。手、足、腋の下、顔などに、日常生活に支障を来たす程の発汗過剰を認める疾患です。多汗症には全身に汗が増加する全身性多汗症と体の一部に汗が増える局所多汗症があり、全身性多汗症には特に原因のない原発性と感染症、内分泌代謝異常や神経疾患に合併するものがあります。局所多汗症も原因のわからない原発性と外傷や腫瘍などの神経障害による局所性多汗症があります。原発性局所多汗症では手のひら、足のうらや脇という限局した部位から両側に過剰な発汗を認める疾患です。
多汗症でお悩みの方のために開発中の「制汗フィルムスキン(仮)」をモニターしていただける方を募集しています。
モニターしていただいた方のご意見を参考に、お悩みを少しでも解決できるより良い商品を開発していくために、ぜひご協力ください。
「制汗フィルムスキン」は医薬部外品申請中です。
ビジネスモデル
フィルムスキン技術を利用したモデルは、大きく分けて「国内商品展開ビジネス」「OEM提供ビジネス」の2つの形態で展開しています。
国内商品展開ビジネスでは、当社で開発した商品を「通販」と「流通」で展開していくビジネスモデルです。
OEM提供ビジネスでは、フィルムスキン®︎技術をつかった商品を当該顧客企業オリジナルで開発していくビジネスモデルです。